Vの歌を聴け

「完璧な投資などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」

既に誰かに抱かれている女の子に思いを馳せる

日本時間の6月7日23時55分に、ニューヨーク証券取引所で、VISAが171.42ドルの値をつけ、高値を更新した。

保有銘柄が高値を更新する、というのは、長い間密やかに恋い焦がれている素敵な女の子が、僕以外の男性と幸せそうに手を握りながら、目の前を通り過ぎていく時の気持ちによく似ている。

今はまだ、その時じゃない。だって彼女はもう、あの男と幸せそうにしているじゃないか。夜にはその小さな手のひらで、あの男の肌を隅々まで愛撫して、喜ばせているのだ。

けれども、それはいつか終わる。その恋も、彼女にとっては本物ではない。それは、歴史が証明してくれている。

悲嘆にくれる彼女にそっと近づき、肩を抱き、慰め、手を取り、僕らは共に歩んでいく。

その時が来るのを、僕はただひたすら、息を潜めて待っている。
本当はそれが間違いだと知っていながら。 

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アフィリエイトについての考察

見ず知らずの誰かからの手紙は、いつだって僕を混乱させる。それはまるで、できたてのペペロンチーノのてっぺんにそっと添えられた梅干しのように、調和と一致を乱し、不安を掻き立てる。

不安、それは、対象の不明瞭な恐怖である。

それは、こんな便りだった。

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一体、何を言っているのだろう。正直なところ、僕には彼女(彼)が僕に何を伝えようとしているのか、理解できなかった。人気ストラテジーアフィリエイト

大学生の頃に付き合っていた女の子は、少しだけ性的な好奇心が強く、僕にいろんなことを試してくれた。

アフィリエイト

その言葉は、彼女が初めて、僕のアヌスにその舌を這わせた時に思わず僕の喉を震わせた、驚嘆や、羞恥や、快感や恍惚が入り混じった奇妙な叫声を僕に思い起こさせる。

アァフィリェィトゥッ!

大体、ブログ村Tumblrはてなブログの違いもわからず、はてなブログTumblrに、全く同じ投稿を同時に行なっている僕に、そんな、ストラテジーだのバナーだの、ITリテラシーを要するようなお願いをしても、わかるわけがない。

僕はそっと、コメント欄から目をそらした。

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誰かの叫びが聴こえる

僕はいつも、夜は22時にはベッドに潜り込むことにしている。それ以上、夜更かしをすると、次の日の仕事のパフォーマンスが低下することを、よく理解しているからだ。

昨日も、いつものように、ヤフーファイナンスでひととおりのニュースを確認した後で、ベッドに体を横たえた。すぐに、睡魔が霧のように僕を包み込む。

少しすると、隣の部屋から男の叫び声が僕のくねくねとした内耳を通り抜け、鼓膜を軽く刺激した。

なんだ?なんて言ってるんだ?

いくつもの物理的な壁をすり抜けた空気の震えが、僕の脳を揺らす。


ギャファガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア?


隣の部屋の男は、こう叫んでいるようにも聴こえる。

一体なんのことだろう。もしかしたら、彼も僕と同じくらい、深刻な問題を抱えているのだろうか?

しかし、なんにせよ、大声で叫ぶほど何かを渇望できるということは、僕にとっては少し、羨ましい気もする。それに、どんな問題だって、ポートフォリオに"V"を入れておけば、大抵のことはなんとかなる。

深刻なのは、心では"V"を求めているのに、今更ポートフォリオには組み込めない複雑な事情がある場合だ。そう、僕のように。
彼の抱える問題が一体どんなものか、まるで見当がつかないが、ヴォネガットならこう言うだろう。
「そういうものだ」と。

 

「くそが、よ…」僕も、インクをひっくり返したような闇の中で一人、ベッドに横たわったまま、試しに静かに呟いてみる。それは全く僕の言葉には聴こえなかった。

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投資家は歩く

「課長、もしかして、歩いて出勤してるんですか?」

若い女性社員がまるで、夏休みに海に遊びに行って磯の石をひっくり返したら、気持ちの悪い虫を見つけたんです、とでも言いだしそうな顔付きで、そう僕に尋ねる。


「そうなんだよ、株の含み損が酷くてね。ガソリンを買うお金も無いんだ。僕の車、ハイオクだし」

「またまたー。鍛えてるんですか?」
彼女は、僕の言うことなど1文字も信頼するに値しないと判断したようだ。

違う、そうじゃない。
無意識に心の中で、鈴木雅之が叙情的なメロディを歌い上げる。

僕の持っている銘柄は、つい何日か前に、上場来最安値をつけたんだ。
損益率でいったら、市場平均をアンダーパフォームどころか、-43%の劣悪なパフォーマンスなんだ。

でもまあ、彼女の気持ちもわからないでもない。

会社始まって以来、最年少での昇進スタート。
今では、よその部長級を理詰めで言い負かすこともある。
30歳を過ぎてからだけれども、ウェイトトレーニングを初めて、今ではなかなかの筋肉質な体型だと、自分で鏡を見てもそう思う。
気楽な独身で、給料は同年代に比べたらだいぶ多い方らしい。
自意識過剰のつもりはないが、周囲の人間が、あいつはできるやつだ、とそう思っているのを感じるし、それに応えるべく、常に新しいことを学び続け、人と違うことに挑戦し、結果を出してきたつもりだった。

順風満帆とまでは言わないが、多くのことが、良い方向に向かっている。そんな風に感じていた。

そう、投資を始めるまでは…

残り少ないJPYを携え、市場で生き残るためには、ガソリンなど買っている余裕は無いんだ。僕はそう言い聞かせる。
そして、今日も、片道40分の道のりを徒歩で、出勤する。

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春の訪れ

そうだ、株を買おう。

僕が初めてそう思ったのは、今からちょうど2年前、僕が人生で3度目のディズニーランド訪問を果たした年の春のことだった。

完璧なまでの幻想に象られた、小ぎれいなネズミたち、おとぎ話の王女、チップとデール…彼らが招き入れた夢の国の熱気にすっかり当てられた僕の懐に、その時突然、投資の女神が舞い降りたのだった。そして、その思念は、まるで啓示のようにまっすぐに、僕の額の奥にある前頭葉のさらに奥、海馬傍回に突き刺さった。

そうだ、株を買おう。

うららかな春、とは言い難い、汗ばむような日差しのもとで、僕は人生で初めて、はっきりと、そう思った。

目的?そんなこと、あとから考えたらいいじゃないか。第一、このありきたりでつまらない人生に、大層な目的など未だ見出せないでいる僕にとって、何事においても合目的的である必要など、これっぽっちも無いのだ。

そうだ、株を買おう。

その時の僕は、少し前に近所の川沿いの土手を埋め尽くしたつくしのように、希望に満ち溢れていた。あるいは、希望に満ち溢れているように見えた。

けれども僕は、あらかじめ悔恨や絶望といった概念をも包含した希望というものがこの世に存在することを、その時はまだ知らなかったのだ。

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